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Vol.7 うちの子、白内障ですか?

院長コラム 2015.09.14

うちの子は、白内障??
「うちの子、眼が白いから白内障でしょうか。」
という質問を、とてもよく受けます。たいてい他の理由で来院されていて、そういえば・・・みたいな感じで質問を受けます。
「眼が白いというだけでは来院することもないかな、でも気になるな。」という飼い主様が多いのではと思い、今日は白内障のお話をさせていただこうと思います。

「眼が白い=白内障」ではありません。
白内障は眼の真ん中にあるレンズ(水晶体といいます)が白く濁っていく病気であり、このレンズの濁りが進行するに従って、光を透さなくなるために視覚を失ってしまいます。ところが、この白内障の濁りが、核硬化症という水晶体の老齢性の変化に、一見とても良く似ているのです。(本当は全然違うメカニズムなのですが。)そのため、飼い主様が、核硬化症という加齢性の変化を、白内障だと思ってしまうことがあるのです。そして、私たち獣医師も普通に見ただけでは白内障か核硬化症か判断がつかないことがよくありますし、白内障が、眼の隅にだけできている場合や初期の場合はしっかり検査しないと発見することができません。白内障かどうか心配な時は、しっかり獣医さんに検査してもらう必要があります。
また、「眼が白くなる」といってもどこが白いかによって話は全然変わってきます。眼の表面が白いのであれば、角膜というところの病気や緑内障が疑われます。これらは緊急の処置が必要になることもあり、直ぐに病院に連れてきて頂く必要があります。
ですから、ひとくちに「眼が白い」と言っても、場合によって、治療が必要ないケースもあれば、すぐに治療が必要なケースもありますので注意が必要です。

「核硬化症」について
さて、飼い主様にはあまり知られていないこの「核硬化症」というのは、白内障とは全く違い、そもそも病気ではありません。年齢を重ねるにつれて、水晶体が硬くなってきてしまう加齢性の変化であり、かなり白くなっても視覚は失いません。少しぼやっとするかもしれませんが、光は透しますし、日常生活に困ることはありません。わんちゃんでは、だいたい7歳くらいからだんだん白くなり始めます。

「白内障」について
ところが、白内障は違います。先ほどお話したように、白内障によって水晶体が白濁した場合は、病気が進行するにつれ、どんどん白くなっていき、そのくもりによって視覚を失ってしまいます。ちょうど白い壁が目の前にできてしまい、真っ暗になるような感じです。また、核硬化症と異なり、若いうちから白内障になることもよくあります。トイ・プードルなどの犬種ではこのような若齢性の白内障がよく見られます。

そして、ここからがとても大切です。
白内障の怖いところは「目が見えなくなるだけではない!」のです…。
この白内障は、手術を行わず放置すると、さらに進行し、白くなってしまった部分が水晶体の外に融け出して、眼の中に炎症を引き起こすことがあります。それにより緑内障や網膜剥離などが起こってくるのです。こうなると、視覚の維持や痛みのコントロールが難しくなり、最終的には眼の摘出や、義眼を入れるなどの外科的処置が必要となってしまうのです。
はじめは、眼が白くなるだけで元気もなくならないし、痛みもないのですが、じつは白内障って奥が深くて怖い病気なんです。
ちなみに、白内障が進行すると最終的に、水晶体が融けだし透明になるため、白内障は治るのではないかと、さらに混乱を引き起こすのですが・・・。水晶体が透明になった状態は、白内障が治癒した状態ではありません。

そんなわけで、「眼が白いから、白内障かしら?」と飼い主様から質問を受けた場合、私の説明はいつも長くなってしまします。核硬化症であれば、問題はないのですが、白内障だったら対処法を考えなくてはならないからです。
もし、眼が白いなと感じたら動物病院で、核硬化症なのか白内障なのかをチェックしてもらってくださいね。

さて、ここからは簡単に治療のお話をします。
白内障が見つかってしまった場合、飼主さまはわんちゃんに何がしてあげられるでしょうか?
見つかった時の年齢や、全身の健康状態によって飼い主様の判断は違ってくると思いますが、簡単にお話します。

視覚の維持を優先したい場合
現在、唯一手術(全身麻酔が必要です)のみが視覚の回復を期待できる方法です。
白内障の手術は、眼という繊細な部位の手術なので、確かな技術や特殊な医療設備を持つ眼科専門医のいる病院で受けることをお勧めします。ただ、ある程度高額でもあり、術後も定期的に眼科専門医の診察を受ける必要があります。時間的にも費用的にも負担がかかりますが、視覚を回復する唯一の方法です。

手術をしない場合
さまざまな理由で手術を希望されない場合でも、ご家族の方がわんちゃんにしてあげられることはたくさんあります。
繰り返しになりますが、視覚を回復するための治療法は手術しかありません。そのため、手術以外の内科治療では視覚を回復できるという期待は持てません。しかし、視覚に限って言えば、片眼のみの白内障であれば、反対側の眼の視覚は維持されますので、日常生活はおくれます。しかし、見えない方の眼から近づくものに関しては気づかないこともありますので、知らない場所に行った時は注意が必要です。また、両眼失明した場合でもわんちゃんが慣れている場所でなら、私たちが驚くほどわんちゃんは普通に過ごすことが出来るでしょう。しかし、新しい場所に行ったり、部屋の模様替えをした後は戸惑ってしまうと思います。わんちゃんに合わせて生活することが大切になります。

また、まだ視覚を失っていない白内障なら、内科治療を行っても良いと思います。白内障の内科的な治療薬はさまざまあり、進行を遅らせる可能性を示すサプリメントや目薬があります。あくまで進行を遅らせるのが目的のものであり、治癒を促すというものではありません。しかし、高価なものではありませんし進行を遅らせる可能性があるので、初期の白内障に関しては試してみる価値があると思います。
最近では白内障を改善する(視覚を改善する)ための点眼がネットや動物病院で入手可能になっていますが、残念ながらこちらの目薬は高価な上、信頼性のある学術的データは示されていません。進行を遅らせられたらいいなーという気持ちでされるのは一つの選択肢かもしれませんが、視覚が回復するというような効果は期待できないと考えています。

また、白内障の進行に伴い、眼の中に炎症を起こしてしまうことが多くありますので、定期的にかかりつけ医や眼科専門医でチェックしてもらい、進行度合いにより炎症予防のための目薬を使用することが薦められます。


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